第76回カンヌ国際映画祭でパルムドールを獲得後、SNSでも話題になっていたフランス映画『落下の解剖学』を先月鑑賞。
カンヌのノミネート作品はいくつか観たが、パルムドールを取っているだけあり、ぶっちぎりで本作品が素晴らしかった。
先日発表された第96回アカデミー賞では納得の脚本賞受賞。会場ではメッシ(犬)が大人気だった様子。
ABOUT THE MOVIE | 映画『落下の解剖学』公式サイト より、あらすじ
これは事故か、自殺か、殺人かー。
人里離れた雪山の山荘で、男が転落死した。
はじめは事故と思われたが、
次第にベストセラー作家である
妻サンドラに殺人容疑が向けられる。
現場に居合わせたのは、
視覚障がいのある11歳の息子だけ。
証人や検事により、夫婦の秘密や嘘が暴露され、
登場人物の数だけ<真実>が現れるが──。
SNSでは「ミステリー映画」「スリラー映画」という意見もあったが、本作品は夫婦間の実態を紐解いていく「ヒューマンドラマ」だった。
裁判で出された断片的な証拠や曖昧な証言から夫婦関係が暴かれていく様子を見て、人と人の関係を客観的に判断することがいかに難しいか考えさせられる。究極、カップルの実態は当事者たちにしか分からない。でも裁判は粛々と進んでいく。
観終わった後改めて『Anatomy of A Fall』というタイトルの意味を考えると、「夫婦関係の解剖学」だと納得した。
作品中で3つの言語が入れ替わる様子も面白かった。死亡した男性の母語はフランス語、被告人女性の母語はドイツ語で、2人は常に英語でコミュニケーションを取ろうとしていた。
しかしフランスに移住後、フランス語圏出身の男性が英語でのコミュニケーションに不満を漏らすのが何ともリアル(というか喧嘩が全体的にリアル)。
また、自分の人生が変わると言っても過言ではない裁判なのに、被告人がフランス語での証言を(半ば)強要されておりつい同情してしまった。
そしてこれはただの棚ぼただが、弁護士ヴァンサン役のSwann Arlaudがとんでもなくイケている。
真面目に話していても酒を飲んでいても運転していても、何をしていても360°やけにかっこいいのである。
Twitterで海外の方が口々に「a hot lawyer」とつぶやいている理由がよく分かった。
今回『落下の解剖学』で主演を務めたSandra Hüllerは『関心領域』でも主演を務めており、こちらも気になるので5/24公開後鑑賞したい。